青年エンデはヒロイン、セレスの呪いを解くため塔に登り、魔物の肉を取ってきて、それを彼女に食べさせる。
鎖をつかった、攻撃や塔内部の仕掛けを動かす謎解きが新鮮で楽しい。
ある時、塔から帰ってくると風に揺れるシーツが目にとまった。
エンデが出かけている間、セレスは一人で待っているのだけれど、そこにはちゃんと生活があるのだなあと感じた。
それが、ささやかながら印象的な場面だった。
二人が暮らす監視塔は、不気味な世界観においてとても美しく平和だけれど、そこには孤独と大きな不安が確かにある。
そういった彼女が抱える思いを理解した上で、プレイヤーは塔へと向かう。
このゲームはアクションゲームであるから、主に舞台となるのはダンジョンであって、プレイヤーが楽しむだろう部分はそこなのだけれど、本作はメインの舞台となる塔だけでなく、帰るべき拠点を丁寧に描くことにも注力している。
ああそうか、塔に「行く」ことではなく「帰る」ことにも重きを置いてあるのだ、と気がついて、そこでふとパッケージを見る。
本作の副題は「君のもとへ帰るまで」であった。
丁寧で繊細な気遣いが生きる良作。