PS4でも今年の2月に発売されて好評を博した”戦国死にゲー”、『仁王』のSteam版が発売されたのに合わせて改めてレビュー。
『仁王』は豊臣秀吉亡き後の戦国時代を舞台に、金髪碧眼の侍「ウィリアム」が霊的な物質”アムリタ”と日本の覇権をめぐる戦乱に巻き込まれていくアクションRPG。
何度も死んでゲームオーバーを繰り返すことで上達していくいわゆる「死にゲー」で、同ジャンルでも有名な「ダークソウル」シリーズにも強い影響を受けています。
開発はコーエーテクモゲームスで「NINJA GAIDEN」などのアクションゲームを手掛けた”Team NINJA”。
ダークな雰囲気のビジュアルと、高い難易度に加えて、様々な種類の武器でのアクションやハクスラ要素など、遊びごたえのあるアクションゲームに仕上がっています。
このページの目次
念願のリリース!『仁王』の来歴
2004年10月28日にコーエー、シブサワコウプロダクション、黒澤プロダクションの3社による協同プロジェクト『鬼(仮称)』として制作発表が行われ、映画監督黒澤明の遺稿を元にした2006年公開予定の映画を核としたメディアミックス作品の一つとして発表され、その後、正式にコーエーのPS3参入ソフト第1弾として正式タイトル『仁王』として発表されました。
映画の公開に合わせてゲームを発売する予定でしたが、その後映画は公開されませんでした。
ゲームジャンルは当初「歴史アクションエンターテインメント」として発表され、内容もRPG要素の強いアクションゲームとして試行錯誤を重ねたものの「シブサワが考える面白さに届かなかった」ため仕切り直すことに。
その後、2010年にコーエーとテクモの経営統合によるコーエーテクモゲームスの設立を経て、旧テクモの開発チームであった”Team NINJA”開発で本作を仕切りなおすことが発表されたものの、2015年には”内容が「NINJA GAIDEN」に似すぎた”との理由で、再び作り直すことになり、それから情報は途絶えました。
週刊ファミ通の”期待の新作ランキング”の中にいつまでも残っていたのを覚えています。
2015年9月にPS4へのプラットフォーム変更が発表され、ゲームのジャンルも「ダーク戦国アクションRPG」に変更されました。
そして、発表から13年の歳月を経てついに、2017年2月7日に発売となりました。
時は流れ、ゲームの内容も変わりましたが、当初から期待していた人は喜びも大きかったのではないでしょうか。
さらに、PCでもプレイできるというのはPCゲーマーにとっては本当にうれしいところですね。
妖魔蔓延る戦国時代絵巻
『仁王』は妖魔が存在する架空の戦国時代を舞台に、金髪碧眼の主人公「ウィリアム」が奪われた守護霊を取り戻すため日本をめぐる壮大なストーリー。
主人公「ウィリアム」のモデルは、実際に日本にやってきたイギリスの航海士”ウィリアム・アダムス”。
その後、徳川家康から”三浦按針”の名乗りを与えられた武士です。
そもそも妖怪が出てくる話なわけですが、主人公「ウィリアム」の設定なども”歴史モノ”としては、フィクション色の強いストーリー。
有名な戦国武将などが多く登場しするの見どころで、徳川家康役に俳優の市村正親さん、ウィリアムを助けるくのいち・お勝役に俳優の武井咲さんを起用し、まるで時代劇を見ているかのよう。
またオープニングムービーで監督を手掛けるのは映画「シン・ゴジラ」など樋口真嗣氏、ムービーシーンには映画『デスノート Light up the New world』や 映画『アイ アム ア ヒーロー』での特撮を担当した神谷誠氏を起用。
音楽には、大河ドラマ『軍師官兵衛』や映画『踊る大捜査線シリーズ』で音楽を担当した菅野祐悟氏が担当するなど、シネマティックな部分にも力が入っています。
”アムリタ”を求める謎の男と、様々な思惑の中、妖魔の力を利用しようとする武将たち。守護霊を取り戻すため家康の下について戦うウィリアムの戦いの行方は・・・。
アムリタを捧げてキャラクターを強化
”アムリタ”はストーリーの要にもなっている霊的エネルギーの結晶。
敵を倒すことで入手できる”アムリタ”を社に捧げることでステータスの各パラメータを強化していく方式で、こちらも”ダークソウル”シリーズと同様。
”心”、”技”、”体”、”武”など身体的な値をアップすると、”サムライスキルポイント”を入手でき、それによって”武技”を解放することができます。
”忍”、”術”をあげれば、忍術スキルポイント、陰陽スキルポイントが上昇し、忍術、陰陽術を解放することができます。
防具には特殊効果が付いており、それらを引き出すために一定値の能力値が必要になるため、重装備に特化してしまうと軽装備を身に着けた際に効果を発揮できなくなってしまいます。
どのステータスを上昇させるかでできることが大きく変化。
防具の最大重量に影響する”剛”をあげることで、重い鎧を着ても動き回ることができますが、軽い鎧の能力を引き出すには”技”が必要になります。
また、忍術や陰陽術は、遠距離攻撃や罠、自身の強化や敵の弱体化など戦術の幅が大きく広がるので、できれば上げておきたいところ。
などなど、どのステータスを上げるのか悩ましい作りになっています。
とはいえ、ステータスの振り直しはアイテムを買うことで行えるようになっているので、比較的気軽に様々なスタイルのキャラクターを試すこともできます。
スピーディかつ緊張感のある剣戟アクション
ひとつ操作を間違えるだけで死につながるヒリヒリするような緊張感のある戦闘は、勝利したときには達成感があります。
『仁王』のアクションは”Team NINJA”が手掛けているのもあり、「ダークソウル」シリーズと比べると動作がスピーディな印象。
”剣術”を意識したシステムになっていて、上段・中段・下段の3つの”構え”を切り替えることでアクションが変化します。
”構え”によって攻撃のモーションが変化し、威力や速度、範囲、消費スタミナなどに影響します。
また、攻撃後に”残身”をすることによって素早くスタミナを回復することもでき、これも剣術ならでは。
人間の敵相手だと、互いに相手の出方見ながらをじりじりと間合いを詰める感覚は剣術そのもの。
攻撃や防御、回避をするたびにスタミナが減少していき、スタミナが失われると一定時間行動不能になってしまうため、過度な攻撃は命取りに。
しかし、敵も同じ条件で動いているので、敵の攻撃をかわすことができれば大きなアドバンテージになります。
難易度は高く、敵の攻撃パターンや攻撃のタイミングなどを覚えて丁寧に攻略していかないと、ザコ敵に殺されることもしばしば。
しっかりした「死にゲー」に仕上がっています。
種類が豊富な様々な武器
武器の種類も豊富で、アクションが違う7つの近接武器と、3種類の遠距離武器から選択することができます。
連続攻撃に防御もこなせる『刀』や、遠距離からまとめて敵を攻撃できる『槍』、素早い連続攻撃で敵を圧倒する『二刀』、一撃必殺の『大斧』など、武器によって立ち回りも大きく変わってくるので、様々なゲームプレイを楽しむことができます。
武器はあらかじめ2つの武器をセットしておくことができ、さらに遠距離武器を2つ装備することができます。
また、防具との組み合わせでも戦闘スタイルが変化するので、様々な戦い方を模索しながらの武器選びが楽しいゲームになっています。
武器ごとにスキルツリーがあり、”武技”を解放することで様々なアクションができるようになっていきます。
守護霊
「守護霊」は、動物や神獣などの姿をしていて、ウィリアムに”憑い”て特殊な力を発揮する存在でストーリーにも深くかかわってきます。
ストーリーミッションやサイドミッションをクリアすることで、新しい守護霊が解放されていきます。
「守護霊」は憑けているだけで特殊な効果を発揮しミッションで大いに役立ちます。
社で”憑け替え”ることで、別の守護霊に変更できます。
九十九武器
守護霊が憑いた状態でアムリタを吸収するとアムリタゲージが上昇していき、最大にたまると「九十九武器」を発動できます。
「九十九武器」を発動すると、武器に守護霊に応じた属性が付与され、攻撃範囲が拡大、ダメージも受けなくなります。
「九十九武器」には耐久力があり、時間経過で徐々に減っていくほか、攻撃したり敵からの攻撃を受けたりガードしたりすることでも減少していきます。
また、守護霊を放つ強力な「守護霊技」を使うこともできます。
必殺技的な守護霊の存在によって、複数の敵に囲まれるなどの危機的な状況も打破することができます。
ウィリアムが死に、刀塚が残ると守護霊は刀塚を守るために一時的にウィリアムを離れ、その間は恩恵を得ることができません。
刀塚
プレイヤーが死ぬと、持っていたアムリタは”刀塚”(かたなづか)としてその場に残ります。
再度、”刀塚”にたどり着けば”アムリタ”を回収できますが、回収する前に死んでしまうとその”アムリタ”は失われてしまいます。
また、”刀塚”を守るために守護霊がその場のとどまり、復活時には守護霊の恩恵を得ることができなくなってしまいます。
装備集めが楽しい”ハクスラ”要素
”ダークソウル”シリーズと大きく違うのは、敵や宝箱からランダムな効果が付いた装備が入手できるいわゆる”ハクスラ”要素。
これによってリトライ時に強化できる幅が広がっており、攻略が比較的楽になっている印象です。
鍛冶屋では、武器同士を”魂合わせ”することで、武器のレベルを上昇させたり、特殊効果の付け替えなどを行うこともできます。
装備の特殊効果は多岐にわたっており、単純に強い装備だけを選んでいくだけではいかず、装備選びにはなかなか悩まされるようになっています。
オンライン要素
『仁王』は基本的にはシングルプレイのゲームですが、オンラインを使った要素も用意されています。
オンラインモードに切り替えた後、拠点のなかにある”鳥居”からメニューを選ぶことができます。
”身振り”で他のプレイヤーに挨拶
「ダークソウル」シリーズでもおなじみの挨拶などのポーズをとる”身振り”は本作でも導入されています。
バリエーションは豊富で、サブミッションの報酬など隠れた”身振り”もあるので集めてみるのも楽しいかもしれません。
ゲーム中にも”身振り”を活躍するシーンが・・・?
血刀塚
ステージ内で、他のプレイヤーが死んだ場所には”血刀塚”(ちかたなづか)が残ります。
血刀塚に近づくとそのプレイヤーの死因が表示され、その周囲の危険を確認することができます。
さらに、血刀塚を調べることで、屍狂い(しかばねぐるい)を呼び出し戦うことができます。
”屍狂い”を倒すと、そのプレイヤーが持っていた装備とアムリタの一部を入手できます。
”屍狂い”は、プレイヤーと同じ動きをしてくるため、様々な種類の武器や術、道具などを使って襲ってくるので他の敵より危険な存在ですが、倒すことでレアリティの高い装備を簡単に入手することができます。
まれびと召喚
手伝ってくれる他のプレイヤーを”まれびと”として呼び出し、一緒に攻略することができます。
また、自身も”まれびと”として他のプレイヤーを手伝うことができ、内容に応じて”武功”を得ることができます。
”まれびと”となったプレイヤーは、死んでしまうとそこで消えてしまいます。
常世同行
2人で連携して攻略することができるCo-opモード。
片方が倒れても蘇生することができます。
「ダークソウル」シリーズとの大きな違いは、フレンドを指定してプレイすることができること。
難易度の高いゲームなだけにコミュニケーションのとれるフレンドと一緒にプレイしたい!と思っていた人は多かったのではないでしょうか。
仕合
ほかのプレイヤーと腕を競うPvPモード。勝率に応じて番付(ランキング)もあり。
1vs1と2vs2の2つのモードと、装備の制限などいくつかのルールを選択できます。
勢力戦
織田や武田といった各勢力に所属することで、恩恵を得ることができます。
勢力に所属するプレイヤーすべての貢献値の合計で勢力ごとに競い合い、ランクに応じてさらに報酬を得ることができます。
また、”武功”と交換で装備やアイテムと交換することができます。
勢力ごとに指示された特殊効果の付いた装備を献上することで、さらに報酬を得ることができます。
クリア後が本番?長く楽しめる満足のボリューム
本編クリア後には、高難易度のミッション「強者の道」が解放され、すべてのステージを新たにプレイすることができます。
最高の「神器」ランクの武具がドロップするようになり、新しい”揃え装備(セット装備)”も入手できるようになり、より装備の入手が楽しくなります。
また、「守護霊」のレベルアップもできるようになり、強化の幅も大きく変化。
無限に続く階層構造のステージ「無間獄」やDLCなどの追加シナリオ、日替わりの高難易度ミッション”逢魔時ミッション”などなど、長く楽しめるタイトルになっています。
(PC版の「Nioh:Complete Edition」にはすべてのDLCが含まれています)
【まとめ】満足感のあるアクションハクスラ
『仁王』はPS3が発売された当初から発表されていたタイトルだけに、企画が消えずにこうやって発売され、しかもPCでもプレイできるということはうれしいことですね。
紆余曲折を経て、「ダークソウル」シリーズ のようなハードコアなゲーム性と「Team NINJA」が手掛ける爽快なアクション、そこに本格的なハクスラ要素が盛り込まれ、これまでありそうでなかった”アクションハクスラ”が出てきたのはうれしい誤算。
ストーリーや世界観は、最初は適当ななんちゃって戦国時代劇かと思っていましたが、歴史的な”if”の世界として面白く描かれており、登場する戦国武将の深い心理描写などもあってなかなか見ごたえのある内容です。
俳優などを起用し、シネマティックな部分にも力が入っているので、そのあたりも見どころです。
別のゲーム会社が作ったアイデアをうまく”流用”するコーエーらしい作品ではあるものの、そのままというわけではなく、うまくコーエーらしくアレンジされて一つの作品として昇華されているように感じます。
また、他作品と比べて”ライト”なのもコーエー作品の特徴でもあり、難しすぎても何度も繰り返して装備を集めているうちに何とかなるようになっていて、プレイ感覚としては比較的広い層にも受け入れられるゲームになっていると思いました。
”死にゲー”は何度も何度も同じことを繰り返さないといけないゲームなので、疲れたり嫌になったりして、クリアした後はもう二度とここはやりたくねえ!と思ってしまうわけですが、「仁王」はその点、比較的軽めの難易度やハクスラ要素などもあって、もう一回やろうかなという気持ちにさせてくれるタイトルです。
ストーリークリア後にもやることは多く、もっと難しいミッションを楽しみたい人はクリア後からが本番。
かなり長く遊べる満足感のある一本。おすすめです!